エンデュランススポーツの科学と実践 - ウルトラランニングの事例で探る: #1 代謝とパフォーマンス
入院後の回復のためにトレーニングのボリュームを控えていることもあり、少し時間に余裕ができたので、以前から温めていた新しい試みに取り組むことにしました。こうした内容の日本語コンテンツがあまり見つからないことが、書き始めるきっかけとなりました。
具体的には、「エンデュランススポーツの科学と実践 - ウルトラランニングの事例で探る」というタイトルで、ウルトラランニングの事例を通じ、科学的な視点から各トピックを深掘りし、その知見がどのように実際のパフォーマンスに活かせるかを探求していきます。
第1回のテーマは「代謝とパフォーマンス」です。エンデュランススポーツにおける効果的な補給戦略や、糖質・脂質の代謝の役割など、パフォーマンス向上にとって重要な要素を取り上げていきます。
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ケース・スタディ
2024年に開催されたLeadville 100(レッドビル100)で、デイビッド・ロッシュが15時間26分34秒という驚異的なタイムで優勝し、コースレコードを更新した。
Leadville 100は、アメリカ・コロラド州リードビルで行われるウルトラマラソンの一つで、標高3,000メートルを超える高地を走る過酷なコースが特徴である。参加者は100マイル(約161キロメートル)を24時間以内に完走することが求められる。
これまでのコースレコードは、伝説的なランナーであるマット・カーペンターが2005年に樹立した15時間42分59秒で、19年間誰にも破られていなかった。しかし、デイビッド・ロッシュがついにその記録を塗り替えた。
デイビッドは、この長く更新されなかった記録を破ることを目標にレースに挑み、入念な準備を行った。特に重要な戦略の一つが「1時間に500キロカロリーを摂取する」というものだった。通常、ウルトラマラソンでは1時間あたり200〜300キロカロリー(糖質に換算すると50〜75グラム)の摂取が推奨されるが、500キロカロリー(糖質に換算すると125グラム)という摂取量は非常に多い。そのため、多くのランナーにとっては消化不良や胃腸の不調を引き起こすリスクが高まる。しかし、デイビッドはこの挑戦を成功させた。
彼が破ったマット・カーペンターは、VO2 Max(最大酸素摂取量)が90.2という驚異的な数値を持つランナーだった。VO2 Maxは持久力や走力を測る指標として非常に重要であり、この数値が高いことは優れた持久力を示している。カーペンターの走力は非常に高く、この記録を超えるためには特別なプランが必要であった。
(続く)
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